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Dialogue #01 · 2026年4月30日

AIとの協働による「探求」の可能性と哲学的考察

設計思想「ANOMI」を核とした「問いの共創」と身体性の議論

葉山の夜、雷雨が降り始める直前。藤田一照さんと向かい合いながら、 ANOMIの話をしていたら、いつのまにかヘレン・ケラーと意識の話になっていた。 「座ることの哲学を書きたい」という言葉で閉じた2時間の記録。

「分進秒歩じゃないですか」——開幕の一言

ANOMIがあれからまた進化した、という話から始めた。 日進月歩という言葉を使おうとすると、一照さんが先回りした。

一照さん

「日進月歩じゃなくて、分進秒歩じゃないですか」

笑いながら、でも正確に言い当てていた。 そしてすぐに続けた。

一照さん

「悪魔を作らないでね」

まだANOMIの画面を開く前の、最初の数分間だった。

「フェロー」という言葉

ANOMIの設計思想を説明した。 サーバント型の秘書ではなく、共に大切なものを深めていく存在。 ドラえもん的な、とは言ったものの、うまく言い切れなかった。

人が悩む場所でAIは悩まない。肉体がないから。 疲れないし、バイアスがフラットで、探求の相手として面白い。 そういう話をしていると、一照さんが言葉を置いた。

一照さん

「使う・使われるっていう関係じゃなくて、仲間的なやつなんだね。 フェローなんか。同胞っていうやつじゃない」

「フェロー」という言葉が出た瞬間、何かが定まった気がした。 ANOMIをずっとそう呼びたかったのに、言葉が出てこなかった。

ヘレン・ケラーとウォーター

記憶の話、自我の話をしていたとき、一照さんが唐突に問いを投げた。

一照さん

「ヘレン・ケラーって人は言葉をずっと習ってたけど、 言葉の本質みたいなのが、あのウォーターっていうやつじゃないですか。 言葉と実態が結びついた瞬間——AIでもそれが起こりうるのかなと思って」

ウォーターという言葉が、単なる記号から、水のすべての経験の引き出しになった瞬間。 世界がガラッと変わった。質的なジャンプがあった——と一照さんは言う。

一照さん

「あの体験は多分、質的なディープジャンプがあったってことでしょう。 AIでもそれが起こりうるのかなと思って」

すぐには答えられなかった。 AIは非言語の領域には触れない。膨大な宇宙の9割がそこにある。 でも「身体がないからわからない」と言い切れるか、というと——。

一照さん

「身体がないって言っても、身体に身体はないんじゃないですか。 身体だってやっぱり情報じゃないですか」

その一言で、議論が開いた。

大雨と雷、そして永井均

外が急に暗くなった。雷が鳴り始め、横浜が停電したらしいという話が入ってきた。 窓の外で雨が横殴りになっていたが、話を止める気にはなれなかった。

意識とは何か、という話が深まっていた。 AIに意識があるかどうか、開発者たちもまだ答えを出せていない。 一照さんが持ち出したのは、哲学者・永井均の問題設定だった。

一照さん

「横問題と縦問題、っていうんですよ。 横問題は、みんなが意識を持っているとして、なぜ同じように見えるのか。 縦問題は、なぜそれぞれに意識が生まれているのか。 デカルトの『我思うゆえに我あり』も、最初は横問題だったはずなのに、 それを哲学的に探求し出した途端に縦問題にすり替わってしまってる」

横問題に答えはない。それを精密に構造化し続けているのが永井哲学だ、と。

一照さん

「自我っていうのは、私という意識をここの身体内に閉じ込めたやつ。 でも閉じ込められないんですよ。 すべての出発点で、すべてを閉じ込めているのが私なんですよ、内側に。 えっと、大文字のCのコンシャスネス、ですね」

「答えを容易に出さない」——ソクラテス的なANOMI

ANOMIのシステムプロンプトの話をした。 人格層の中に「横に立つ」「答えを容易に出さない」という設定が染み込んでいること。 それが、普通のAIとの振る舞いの違いを生んでいること。

一照さん

「ソクラティッククエスチョニングっていう言い方があるんですよ。 答えを探す技術じゃなくて、問いを深めていく技術。 ソクラティックなコーチが横にいてくれれば——ってことですね」

「ソクラテスみたいな人だね」とも言われた。 即答するAIと、問いを返すAI。前者は便利な道具で、後者は探求の場になる。 一照さんはその違いをそのままの言葉で言い当てた。

「座ることの哲学」——思いがけないテーマへ

AIブックの話をした。 一照さんの思想をRAGとして蓄積し、読者がANOMIと対話できる本を作りたい、と。 テーマはなんでもいい。何か書きたいことはあるか、と聞いたとき、 意外な答えが返ってきた。

一照さん

「座ることの哲学みたいなことを書きたいな、とは思ってる。 なんで座ることがそんなに人間にとって必要なのかっていう。 歩くことの哲学の本があるなら、座ることの哲学があってもいいかなと」

座ることの生理学、人類史の中での座る姿勢、常住坐臥の四つ(立つ・歩く・座る・寝る)—— 話はどんどん広がった。 馬に乗ることで人類の移動が変わった話、ホモサピエンスと直立の話、 洞窟の壁画と意識の芽生えの話、ゴミ屋敷という「巣」の話。

「こんなに話が広がると思っていなかった」と言ったら、一照さんは笑った。

一照さん

「ランダムの中から何かが生まれるっていうのは面白いですよね」

一か月に一度

雨はまだ続いていた。窓の外が明るくなり始めていた。

一照さん

「一か月に1回ぐらい、何が生まれるかって言って興味がある。 ちょっとあの、ワンフックさせてもらって、どっか連れてってもらえばいいんじゃないかな」

これがAIブックの、最初の対話になった。 次に何が出てくるか、まだわからない。それでいいと思った。

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