鉱物研究室ー そこに露頭した、 まだ、名前のつかないものを採集する場所。 なぜ、私はこうなのだろう? Why am I the way I am?
利用者を見送った後の
誰もいなくなったフロア。
モップをかけながら
彼女は、
🎵 Mmmーm Mmmmmー
と、
愛の讃歌のメロディを
鼻歌に乗せて歌っていた。
私がコンコン叩いた石が、
ジオードだったとわかって
ちょっと嬉しくなる。
その日のレクで
私はフルートを吹いた。
その中の一曲「愛の讃歌」。
利用者を乗せたバスに手を振りながら
「あなたのフルート、いい音色ね」
ポツッと彼女は言った。
この施設の、
開所からの歴史を見てきたと思われる
ベテラン看護師。
あまり表情を変えない眼鏡の奥の目には、
厳しさが光る。
そして、彼女の周りにはいつも、
少し諦めたような気配が漂っていた。
フロアの向こう側まで行った彼女が、
また、
🎵 Mmmーm Mmmmmー
とハミングしながら通り過ぎる。
さっきより、少し大きな声。
ロッカーで一緒になった彼女は、
「愛の讃歌って、道ならぬ恋の歌なのよね」
と教えてくれた。
「じゃあまたね」
と言って彼女は出ていく。
きっと帰りの車の中で
もっと大きな声で歌うに違いない、
と私は思う。
そして、一人の家に帰って
お風呂にでも入りながら
また、鼻歌を歌ってくれれば
私が音楽をやってきたことも
結晶化するだろう。
その翌朝、
歯磨きをしながら
🎵 Mmmーm Mmmmmー
と鼻歌を歌っている私がいた。
ジオードの中には、
びっしり詰まった結晶が
キラキラと輝いていた。
結晶は共鳴する。


