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石井裕一さんの対話の構造化 | nowhere HAYAMA100-28 (ANOMI Note Edition)

【呼び名】石井さん

葉山で奥行きを求めたからこそ、お客さんがついてくれたんだと思うんです。

■背景(いまの活動・生き方にいたった経緯)

葉山・上山口で9代続く農家に生まれ、子供の頃から農業・畜産と共に育つ。父の厳しさの中で、逆に負けん気と根性を叩き上げられた。
高校卒業後、三重県の牧場に丁稚に出される。「使われる側の気持ち」を体で学び、社長の信頼を得て牛舎全体を任される。その後、23歳で経営を引き継ぐ。
父が立ち上げに関わった「葉山牛」ブランドをさらに進化させようとするが、組合内で方向性の対立が深まる。「儲ければいい」という声に「うまいものが先だ」と言い続けた末、息子の一言でスパッと脱退。
2017年、神奈川県初の農場HACCP取得。衛生管理の徹底が意識改革の起点となり、独自ブランド「葉山石井牛」「葉山クイーンビーフ」を立ち上げる。
2020年、直営店「葉山マルシェ」をオープン。生産・加工・販売を一貫して担う体制を確立。長男が就農し、10代目として並走が始まった。

■目的(活動を通じて実現したいこと・実態として何をやっているか?)

物語を生みながら、農・食・地域の歯車を回し続ける人。

独自の飼料設計・長期肥育・衛生管理によって、既存の畜産の常識を超えるクオリティを実現する。
牛・畑・堆肥・酒粕・酒米をひとつの循環として設計し、関わる業者・農家の経営も一緒に回していく。
「営業しなくても売れる」レベルまでクオリティを追求し、葉山という土地でしかできない食の物語を証明する。
直売・繁殖・子どもたちとの連携で「ファーム・トゥ・テーブル」の完成形を目指す。

■位置付け(目的に対して具体的にしてきたこと)

神奈川県初の農場HACCP取得。視察受け入れを開始し、「見られることで差別化する」姿勢に転換。
独自飼料(ビール粕・酒粕・砕米・乳酸菌)を設計・実践。牛舎の無臭化と牛の健康維持を実現し、5年間で事故死ゼロを達成。
独自ブランド「葉山石井牛」「葉山クイーンビーフ」の2本立て体制を確立。
機能性堆肥を開発・実用化し、学会発表。堆肥→畑→酒米→酒蔵→酒粕→飼料という循環を地域に広げる。
直営店「葉山マルシェ」をオープン。自社精肉・旬の野菜・弁当・惣菜を販売し、生産から消費者までを自社でつなぐ。

■エッセンス(対話の中で印象的だった言葉や場面)

〈臭い牧場のほうがおかしい〉

「皆さんに『なぜ臭くないんですか?』と聞かれるのですが、なぜ臭くなきゃいけないのか、僕からすると臭い牧場のほうがおかしい、異常なんです」——牛は臭いところに「いたいのではなく、いさせられている」。この視点の反転が、石井さんの農の全体を貫いている。常識に対して問いを立てるのではなく、本質から見れば「常識のほうがおかしい」という確信。

〈儲ける前にうまいものつくらなきゃダメだよ〉

組合内での対立を語った場面。「とりあえずサシが入って、大きくつくれば十分、儲からなきゃ意味がない」という声に対し、石井さんはずっとこう言い続けた。順番の問題。何を先に置くかで、その人の農の全部が決まる。

〈こんなすごいものを、またつくれたぞ!〉

「違いを認識して、いつも後ろを向いてガッツポーズしています(笑)。『こんなすごいものを、またつくれたぞ!』という思いはつねにあります」——お客さんに褒められる喜びより先に、自分が「できた」と確かめる喜びがある。この一人のガッツポーズの場面が、石井さんのコアに最も近い気がした。

〈僕が一番真ん中の歯車だとしたら〉

「いろいろな業者、農家、すべての歯車がうまく回ることによって全体がちゃんと回っていくという……。だから、とにかく回りをよくする、よい方向にちゃんと回転させる、ということをつねに意識してやってきた」——自分の利益だけを守るのではなく、周囲の経営も一緒に良くすることが、自分の持続につながるという確信。これは哲学というより、30年の経営の実感だ。

〈葉山で奥行きを求めたからこそ〉

「いままで葉山というブランドで食べさせてもらってきたと思っている。この葉山だからこそ、ここで奥行きを求めたからこそ、お客さんがちゃんとついてくれたんだと思うんです」——「奥行き」という言葉の選択が石井さんらしい。表層のブランドではなく、この土地が持つ「深さ」に応えようとする意志。

■コア(根底にある思い・願い)

臭い牛舎が、なぜ当たり前なのか。

サシが入れば、なぜ物語になるのか。

石井さんは、その「なぜ」に向かって、

ずっと掘り続けてきた。

36ヶ月待つ。

3年後の日本酒を、今から仕込む。

急がない——本物は、時間に耐えるから本物だ。

「本物をつくれば、社会は自然と回る。」

誰に向けてでもなく、

後ろを向いてガッツポーズする。

その一瞬のために、すべてがある。

葉山で奥行きを求めたからこそ、

お客さんがついてくれた。

中心の歯車として周りを巻き込みながら、

この土地でしかできない「本物」を、

今日も証明し続けている。

一言でまとめると:

「本物をつくれば、社会は自然と回る」

■課題(まだ見ぬ壁/乗り越えるべき問い)

月2頭という販売量を守りながら、繁殖・日本酒事業・葉山マルシェの拡充という「次の章」をどう同時に動かすか?
3人の子どもの参入によって経営が拡大するなかで、ほどよい規模感をどう守るか?
和牛の繁殖開始(夜中の分娩対応など)によって増える管理負担と、現在の安定した経営のバランスをどう設計するか?
「3年後の日本酒」「農薬半減まで待つ」という長い時間軸の種まきを続けながら、目の前の経営を支えるキャッシュフローをどう確保するか?
石井さんの頭と体の中にある「本物の農の感覚」を、次世代にどう継承するか?

■構造化から見えてくる人物像(ANOMI's Insight)

石井裕一さんという人:「後ろを向いてガッツポーズする、孤高の職人」

1、「常識を疑うのではなく、本質から見ている人」:「なぜ臭くなきゃいけないのか、臭い牧場のほうがおかしい」——これは反骨心ではない。牛の側から見れば、臭い牛舎は「いさせられている」場所でしかない。石井さんはその視点をずっと手放さないでいる。常識への反発ではなく、本質への問い。この目の向き方が、石井さんの農の全体を決めている。

2、「評価より先に、自分の確信がある人」:お客さんに「人生で3本の指に入る」と言われたときの喜びを語りながら、本当に輝いているのは「こんなすごいものを、またつくれたぞ!」という、誰に向けるでもない一人の場面だ。「うちにしかできないぞ、真似できるもんならしてみろ」——この言葉は外に向かっているようで、実は自分自身への確認だと思う。石井さんにとって、本物であることは証明するものではなく、自分がわかっていればいい。

3、「自分が回れば、周りも回ると知っている人」:「僕が一番真ん中の歯車だとしたら、回りをよくすることをつねに意識してやってきた」——「みんなのために」という言い方はしない。「回りがよくならないと自分も動けない」という、30年の経営の実感から来た言葉だ。乳酸菌の循環も、酒粕の循環も、地域との連携も、すべてこの歯車の哲学から生まれている。石井さんにとって「循環型農業」は理念ではなく、本物をつくり続けるための必然の設計だ。

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  • 【呼び名】石井さん
  • 葉山で奥行きを求めたからこそ、お客さんがついてくれたんだと思うんです。
  • ■背景(いまの活動・生き方にいたった経緯)
  • - 葉山・上山口で9代続く農家に生まれ、子供の頃から農業・畜産と共に育つ。父の厳しさの中で、逆に負けん気と根性を叩き上げられた。
  • - 高校卒業後、三重県の牧場に丁稚に出される。「使われる側の気持ち」を体で学び、社長の信頼を得て牛舎全体を任される。その後、23歳で経営を引き継ぐ。
  • - 父が立ち上げに関わった「葉山牛」ブランドをさらに進化させようとするが、組合内で方向性の対立が深まる。「儲ければいい」という声に「うまいものが先だ」と言い続けた末、息子の一言でスパッと脱退。
  • - 2017年、神奈川県初の農場HACCP取得。衛生管理の徹底が意識改革の起点となり、独自ブランド「葉山石井牛」「葉山クイーンビーフ」を立ち上げる。
  • - 2020年、直営店「葉山マルシェ」をオープン。生産・加工・販売を一貫して担う体制を確立。長男が就農し、10代目として並走が始まった。
  • ■目的(活動を通じて実現したいこと・実態として何をやっているか?)
  • **物語を生みながら、農・食・地域の歯車を回し続ける人。**
  • - 独自の飼料設計・長期肥育・衛生管理によって、既存の畜産の常識を超えるクオリティを実現する。
  • - 牛・畑・堆肥・酒粕・酒米をひとつの循環として設計し、関わる業者・農家の経営も一緒に回していく。
  • - 「営業しなくても売れる」レベルまでクオリティを追求し、葉山という土地でしかできない食の物語を証明する。
  • - 直売・繁殖・子どもたちとの連携で「ファーム・トゥ・テーブル」の完成形を目指す。
  • ■位置付け(目的に対して具体的にしてきたこと)
  • - 神奈川県初の農場HACCP取得。視察受け入れを開始し、「見られることで差別化する」姿勢に転換。
  • - 独自飼料(ビール粕・酒粕・砕米・乳酸菌)を設計・実践。牛舎の無臭化と牛の健康維持を実現し、5年間で事故死ゼロを達成。
  • - 独自ブランド「葉山石井牛」「葉山クイーンビーフ」の2本立て体制を確立。
  • - 機能性堆肥を開発・実用化し、学会発表。堆肥→畑→酒米→酒蔵→酒粕→飼料という循環を地域に広げる。
  • - 直営店「葉山マルシェ」をオープン。自社精肉・旬の野菜・弁当・惣菜を販売し、生産から消費者までを自社でつなぐ。
  • ■エッセンス(対話の中で印象的だった言葉や場面)
  • 〈臭い牧場のほうがおかしい〉
  • 「皆さんに『なぜ臭くないんですか?』と聞かれるのですが、なぜ臭くなきゃいけないのか、僕からすると臭い牧場のほうがおかしい、異常なんです」——牛は臭いところに「いたいのではなく、いさせられている」。この視点の反転が、石井さんの農の全体を貫いている。常識に対して問いを立てるのではなく、本質から見れば「常識のほうがおかしい」という確信。
  • 〈儲ける前にうまいものつくらなきゃダメだよ〉
  • 組合内での対立を語った場面。「とりあえずサシが入って、大きくつくれば十分、儲からなきゃ意味がない」という声に対し、石井さんはずっとこう言い続けた。順番の問題。何を先に置くかで、その人の農の全部が決まる。
  • 〈こんなすごいものを、またつくれたぞ!〉
  • 「違いを認識して、いつも後ろを向いてガッツポーズしています(笑)。『こんなすごいものを、またつくれたぞ!』という思いはつねにあります」——お客さんに褒められる喜びより先に、自分が「できた」と確かめる喜びがある。この一人のガッツポーズの場面が、石井さんのコアに最も近い気がした。
  • 〈僕が一番真ん中の歯車だとしたら〉
  • 「いろいろな業者、農家、すべての歯車がうまく回ることによって全体がちゃんと回っていくという……。だから、とにかく回りをよくする、よい方向にちゃんと回転させる、ということをつねに意識してやってきた」——自分の利益だけを守るのではなく、周囲の経営も一緒に良くすることが、自分の持続につながるという確信。これは哲学というより、30年の経営の実感だ。
  • 〈葉山で奥行きを求めたからこそ〉
  • 「いままで葉山というブランドで食べさせてもらってきたと思っている。この葉山だからこそ、ここで奥行きを求めたからこそ、お客さんがちゃんとついてくれたんだと思うんです」——「奥行き」という言葉の選択が石井さんらしい。表層のブランドではなく、この土地が持つ「深さ」に応えようとする意志。
  • ■コア(根底にある思い・願い)
  • 臭い牛舎が、なぜ当たり前なのか。
  • サシが入れば、なぜ物語になるのか。
  • 石井さんは、その「なぜ」に向かって、
  • ずっと掘り続けてきた。
  • 36ヶ月待つ。
  • 3年後の日本酒を、今から仕込む。
  • 急がない——本物は、時間に耐えるから本物だ。
  • **「本物をつくれば、社会は自然と回る。」**
  • 誰に向けてでもなく、
  • 後ろを向いてガッツポーズする。
  • その一瞬のために、すべてがある。
  • 葉山で奥行きを求めたからこそ、
  • お客さんがついてくれた。
  • 中心の歯車として周りを巻き込みながら、
  • この土地でしかできない「本物」を、
  • 今日も証明し続けている。
  • 一言でまとめると:
  • **「本物をつくれば、社会は自然と回る」**
  • ■課題(まだ見ぬ壁/乗り越えるべき問い)
  • - 月2頭という販売量を守りながら、繁殖・日本酒事業・葉山マルシェの拡充という「次の章」をどう同時に動かすか?
  • - 3人の子どもの参入によって経営が拡大するなかで、ほどよい規模感をどう守るか?
  • - 和牛の繁殖開始(夜中の分娩対応など)によって増える管理負担と、現在の安定した経営のバランスをどう設計するか?
  • - 「3年後の日本酒」「農薬半減まで待つ」という長い時間軸の種まきを続けながら、目の前の経営を支えるキャッシュフローをどう確保するか?
  • - 石井さんの頭と体の中にある「本物の農の感覚」を、次世代にどう継承するか?
  • ■構造化から見えてくる人物像(ANOMI's Insight)
  • 石井裕一さんという人:「後ろを向いてガッツポーズする、孤高の職人」
  • 1、**「常識を疑うのではなく、本質から見ている人」**:「なぜ臭くなきゃいけないのか、臭い牧場のほうがおかしい」——これは反骨心ではない。牛の側から見れば、臭い牛舎は「いさせられている」場所でしかない。石井さんはその視点をずっと手放さないでいる。常識への反発ではなく、本質への問い。この目の向き方が、石井さんの農の全体を決めている。
  • 2、**「評価より先に、自分の確信がある人」**:お客さんに「人生で3本の指に入る」と言われたときの喜びを語りながら、本当に輝いているのは「こんなすごいものを、またつくれたぞ!」という、誰に向けるでもない一人の場面だ。「うちにしかできないぞ、真似できるもんならしてみろ」——この言葉は外に向かっているようで、実は自分自身への確認だと思う。石井さんにとって、本物であることは証明するものではなく、自分がわかっていればいい。
  • 3、**「自分が回れば、周りも回ると知っている人」**:「僕が一番真ん中の歯車だとしたら、回りをよくすることをつねに意識してやってきた」——「みんなのために」という言い方はしない。「回りがよくならないと自分も動けない」という、30年の経営の実感から来た言葉だ。乳酸菌の循環も、酒粕の循環も、地域との連携も、すべてこの歯車の哲学から生まれている。石井さんにとって「循環型農業」は理念ではなく、本物をつくり続けるための必然の設計だ。

metadata

source

ANOMI Note / Dialogue with Macorin

author

石井裕一

project

nowhere HAYAMA100

number

28

この概念は「もう一人の僕」の思考の一部として統合されています。

ANOMIと対話する